相続税申告のポイント㊴~居住用の区分所有マンションの評価の改正②

今回は、令和年の相続・贈与から改正された「居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)の評価」について、第36回のブログに引き続き取り上げます。具体的な改正の内容については、36回のブログを参照いただきたいのですが、今回は具体的な例をご紹介したいと思います。

 

() 筆者が過去に相続税申告で評価したことがある東京都23区内のいわゆるタワーマンションについて、仮に令和7年1月1日に相続があったと仮定して、区分所有補正率を計算してみた事例は次のとおりです。

 

    港区六本木に所在する47階建てのマンション(平成24年築)

区分所有補正率…1.8054

    港区三田に所在する36階建てのマンション(平成22年築)

区分所有補正率…1.7196

    中央区佃に所在する40階建てのマンション(平成22年築)

区分所有補正率…1.9044

この3つの事例はいずれも築15年前後経過しているマンションですが、区分所有補正率は1.71.9であり、つまり従来の評価より1.71.9倍評価額が上がることを意味します。(※貸家建付地や貸家の評価による減額、小規模宅地等の特例による減額を考慮しない)

 筆者のところにはごく最近に建築されたマンションの事例がないので詳しいことは述べられませんが、税理士向けの専門誌等の情報を見ますと、築年数が3年程度と浅い都内のタワーマンションの例では、区分所有補正率が2.0を超える、つまり従来の評価額の倍の評価となるものもあるそうです。しかし従来の約2倍の額となった評価額であっても、まだ市場価格の5割程度の額だそうです。別の見方をすれば、令和5年までの従来の相続税評価額の水準が市場価格に比しずいぶん低額であったといえるのではないかと思います。 

() 筆者が昨年行った相続税等の評価において、実際に区分所有補正率の計算を行った事例は7件ありました。

  それらの事例を見ますと、低層(3階建)で築30年程度のマンションでは区分所有補正率が「1.0」を切るものがありました。区分所有補正率が「1.0」を切るということは、従来の路線価等による評価額を下げる補正を行うということです。

  また、中層(14階建)で築約40年のマンションでは、評価水準が0.61.0の範囲内となり、区分所有補正率のよる補正を行わないという結果になりました。(区分所有補正率のよる補正を行わないということは、従来の路線価等の評価額によるということです。)

  一方、低層(5階建)であっても、築10年程度のマンションでは、区分所有補正率が約1.2となり、低層でも築浅のマンションについては、ある程度評価額が上がる結果になりました。

  これら「居住用の区分所有財産」の評価の対象となるものは、何も都内のいわゆるタワーマンションに限らず、全国どこにあるマンションであっても、また、低層マンションであっても地上階3階以上のマンションは適用の対象となる可能性があります。 

マンション敷地や家屋の評価にあたっては「居住用の区分所有財産」に該当するか必ず確認したうえで、該当した場合には「居住用の…区分所有補正率の計算明細書」によって区分所有補正率の計算を行って評価するよう注意が必要です。(いわゆるリゾートマンションであっても、要件に合致すれば「居住用の区分所有財産」に該当しますのでご注意ください。)

(3) 「居住用の区分所有財産の評価」における疑問点

  これは筆者が実際に当たった事例ですが、敷地権の及ぶ土地が複数の筆に及ぶケースで、その筆ごとに「敷地権の割合」が異なるという事例がありました。

  改正通達の主旨から考えて、区分所有補正率の計算明細書の「⑦敷地権の割合」欄は、【(各筆の地積×その筆の敷地権の割合)の計÷各筆の地積計】の算式で計算した、いわゆる加重平均した割合により計算するものと思われます。

  また、固定資産税の評価証明書に、所有するマンション1室の建物のほかに、家屋番号の異なる「集会室(共用部分)」が載っているというケースがありました。この場合の共用集会室の家屋評価において「区分所有補正率」を乗じるべきか否か迷いましたが、その集会室の建物登記を取ってみたところ、種類欄が「集会室」となっており「居宅」ではなかったことから、区分所有補正率を乗じることなく、固定資産税評価額と同額で評価したという事例もありました。 

  いずれのケースも私の考えが正しいかどうか現状では検証する術はありませんが、今後実際に色々なケースにおいて疑問点は生じると思われます。国税庁には質疑応答事例等により更なる情報の提供を期待したいと思います。