今回は、相続税評価における減価償却の計算の注意点について、特に所得税・法人税と取扱いが異なる点を説明します。
相続税評価においては、その資産の当初取得時期により償却方法を区分して計算することはしません。附属設備・構築物・一般動産については、課税時期が平成20年1月1日以後であれば、一律に19年度改正後の定率法を適用することになっています。(家屋の償却計算の方法については、当ブログの「家屋の評価」を参照)
被相続人の取得時期により、年の途中で償却方法等を変更することは、相続税の時価評価の観点から適当でないこと、また、路線価等は暦年で改定していることとの整合性を考慮したことがその理由です。なお、定率法の計算方法自体は所得税と同じですから、改定償却率を適用して残存価額1円まで償却します。
「耐用年数」については、課税時期の属する年の1月1日に施行されている耐用年数省令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号))により計算することとされています。(なお、譲渡所得の取得費の計算(所得税法施行令85条)のように、非事業用資産について耐用年数の1.5倍の年数を適用するような取り扱いはありません。)
また、「償却率」についても同様に取り扱うものと考えられますので、附属設備・構築物・一般動産については、課税時期が平成25年1月1日以後のものから200%定率法による償却率により計算するものと考えられます。
「経過年数」については、月の端数はすべて切り上げ、年単位で計算します。月数による按分計算は行わないことに注意してください。(なお、一般動産の経過年数の計算におけるその始期は、その資産の取得の時からではなく、製造の時からですので注意してください。)
家屋、附属設備、並びに構築物の償却費相当額の計算におけるその基礎となる金額は、課税時期における「再建築価額」によるとされており、実際の取得価額ではありません。
再建築価額とは、課税時期においてその財産を新たに建築又は設備するために要する費用の額の合計額をいいます。
しかし、規格品ではない家屋の増改築等の工事や附属設備等について、まったく同じものを課税時期に建築した場合の費用の額を実際に算定するのは非常に困難であると思われます。(もし、施工業者等の見積額によるのであれば、恣意的な見積額とならないこと、また、課税時期現在の見積額とすることが重要であると考えます。)
そこでひとつの方法として、実際の建築(取得)価額について、取得時から課税時期までの間の価格変動分の調整を加えた額を、再建築価額相当額として計算することも認容されうるのではないかと筆者は考えます。
その価格変動分の調整を行う際の指標としては、財団法人日本不動産研究所の全国木造建築費指数や、財団法人建設物価調査会の建築費指数などが考えられます。
(参考)前回までのブログで説明しました「家屋、附属設備、構築物、一般動産の評価の方法」や、今回説明しました「減価償却の計算方法」は、非上場株式の評価の際の純資産価額の計算における、法人が所有する各資産の相続税評価額の算定においても、基本的にこれと同じ方法により計算します。(非上場株式の評価については、次回以降のブログで取り上げます。)
(次回に続く)