事業(農業)用財産や不動産貸付用の財産については、準確定申告書添付の青色申告決算書・収支内訳書の「減価償却費の計算」欄に記載されている各資産が、相続財産として計上されているか確認する必要があります。決算書の「貸借対照表」上の各資産も同様です。
家屋及び附属設備については、各資産が、家屋の固定資産税評価額に含まれているものかどうかを検討する必要があります。具体的には、家屋はその取得年月が、登記上の取得年月や固定資産税課税明細書等の建築年と異なるものは、増改築等の可能性が高いので、特に注意が必要です。附属設備は、附属設備の種類、所有者、構造上の一体性、取得時期に注意して、本体家屋の固定資産税評価額に含まれているものかどうかを個々に検討します。(家屋については前々回のブログを、附属設備については前回のブログを参照)
また、構築物、一般動産についてはそれぞれ個々に評価して財産計上します。
構築物の評価の方法(償却費の計算方法を含む)は、上記の別途評価する場合の附属設備のそれと同じです(財産評価基本通達97)。ただし附属設備の場合と違い、貸付の用に供する構築物であっても、借家権相当額は控除できないと考えられます。
一般動産で、売買実例価額等が明らかでないものについては、同種、同規格の新品の課税時期における小売価額から定率法による償却費の額を控除した金額により評価します(同通達129・130)。なお、一般動産の評価においては、家屋、附属設備や構築物と違い「100分の70に相当する金額」という取扱いはありませんので注意してください。(償却費の額を控除した額に7掛けはできないということです。)
(参考)事業用財産の計上については、準確定申告時の簿価(減価償却残高)そのままの額により計上しているケースが見受けられます。減価償却残高が時価相当額であるという(ひとつの)考え方自体を完全否定するつもりはありませんが、財産評価通達に定める方法により評価した方が、一般的には減価償却残高より安い評価額になることが多く、納税者有利といえます。
ただし、特別償却や割増償却をしている場合は、通常、相続税評価額の方が高くなります。(相続税評価においては特別償却や割増償却、また即時償却の定めはありません。このことから、即時償却済であるため帳簿上資産計上されていない資産であっても、相続開始時に耐用年数を経過していないものについては、別途評価して財産計上しなければいけないということになります。太陽光発電設備など注意が必要です。)
(次回に続く。次回は、相続税評価における減価償却の計算について整理して説明します。)