相続税申告のポイント㉑~高圧線下の宅地の評価

 高圧線下の宅地については、財産評価基本通達27-5(区分地上権に準ずる地役権の評価)の定めにより算出した地役権相当額を控除して評価します。(同通達25(5))※この場合の高圧線とは、「電気設備に関する技術基準を定める省令」に定める7千ボルトを超える特別高圧架空電線をいいます。

 この地役権の額は、原則として土地利用制限率公共用地の取得に伴う損失補償基準細則の別記2を基とした割合により計算しますが、土地利用制限率の算出は専門性が高く非常に難しいものです。 

よって通常は、対象地の家屋の建築制限の度合いに応じ、家屋の建築が全くできない場合は50%又は対象地の借地権割合のいずれか高い方の割合を、家屋の構造や用途等に制限を受ける場合には30を地役権の割合として評価します。(同通達27-5に定める簡便法)

 高圧線下の土地であるかどうかは現地確認により把握しますが、事前の机上調査である程度予測することができます。路線価図や住宅地図には高圧線の鉄塔が記号で表示されています。この鉄塔の位置を直線で結んだところには高圧線が通っていると予想できます。 

またGoogleマップなどの航空写真でも、ある程度把握は可能と思われます。(都市計画図等にも高圧線の位置がで表示されている例が多いようです。)

 

さらに対象地周辺の公図を確認し、土地の利用状況に関係なく斜めに分筆された土地が横断しているような形態の土地があった場合には、電力会社による地役権が設定されている可能性が大です。

 

 対象地の上を高圧線が通っていることを確認したら、対象地の登記事項証明書の乙区により、地役権の登記の有無とその地役権の内容を確認します。(乙区に記載されている地役権の設定の範囲が「全部」でない場合には、当該土地の「地役権図面」も確認します。) 

また、土地所有者に対し、電力会社等との契約の有無とその内容を確認します。(高圧線下の宅地の評価は、地役権設定登記がなくても、電力会社等との債権契約による場合でも適用ができます。) 

さらに、付近の鉄塔の位置を確認し、鉄塔に表示されている電力会社等の連絡先に電話し、対象地の場所を示したうえで『当該送電線のボルト数と地上からの高さ、対象地の場所の建築制限の内容(程度)と、建築制限を受ける範囲』について具体的に聴取します。(ボルト数を確認するのは、その数値により建築制限の程度が変わるためです。) 

(参考1)電力会社等への電話照会の際には、対象地の住所のほか、近くの鉄塔の番号を伝えると話がスムーズになると思います。(たとえば、対象地は〇〇(送電)線の鉄塔№△と№◇の間に位置します、など) 

(参考2)高圧線の鉄塔は電力会社だけでなく、たとえば鉄道会社が設置しているものもあります。

 高圧線下の宅地の評価における注意点は、次のとおりです。 

評価対象地の一部について地役権が設定されている場合には、控除する地役権の額を計算する際の地積は、あくまで地役権設定部分の地積によります。地役権の設定されていない部分(または建築制限の及ばない部分)まで含めた全体地積で計算して控除すると過小評価になってしまいますので注意してください。(地役権が登記されている場合には、登記事項証明書の乙区の記載等により地役権設定部分の地積の把握は容易ですが、登記されていない場合には、電力会社等との契約内容等を詳細に確認して建築制限が及ぶ範囲の地積を把握する必要があります。契約書に範囲を示す図面が添付されているケースが多いと思います。)

 

地役権の割合を50(又は借地権割合)もしくは30%とすることができるという取扱い(上記記載の簡便法)は、家屋の建築の制限の程度に着目した区分によるものであるため、家屋の建築が原則としてできない調整区域内の農地や山林、原野の評価においては、この簡便法の割合を適用して計算することはできません。(この場合は原則どおり土地利用制限率を基とした割合により評価することになります。しかし、調整区域の農地を農地として利用するうえでは高圧線下であることによる利用制限はほとんどないと考えられますので、現実的には高圧線下であることのしんしゃくはできないと考えます。山林、原野の場合も同様です。) 

倍率方式で評価する宅地の場合、対象地の固定資産税評価額が、高圧線下の土地であることによる利用価値の低下を考慮して評定されているときには、そのまま倍率を乗じて地役権相当額を控除すると、二重の意味で減額してしまうことになります。 

この場合には、固定資産税評価額を高圧線下による利用価値の低下がないものとした場合の評価額に引き直したうえで計算することになります。(通常は、近傍標準宅地の固定資産税評価額を基に計算します。) 

次回に続く

この記事のカットは一部国税庁のホームページから引用しました。(ホームページの画面を加工、トリミングしています。)