今回も前回に引き続き「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる宅地の各要件等について解説していきます。
6 倍率地域の要件(倍率地域に所在する宅地の場合には、大規模工場用地(評価通達22-2)に該当するものでないこと。)
対象地が倍率地域の場合には、大規模工場用地でないか確認します。大規模工場用地とは、一団の工場用地の地積が5万㎡以上のものをいいます。
なお、大規模工場用地の評価倍率は、「一般の土地等用」の評価倍率表ではなく、「大規模工場用地用」の評価倍率表で確認します。
倍率地域における地積規模の大きな宅地は、①近傍宅地の固定資産税評価額または固定資産税の路線価に宅地の評価倍率を乗じたものを路線価と置き換えて、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額か、②その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額、のいずれか低い価額により評価します。
固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額(通常の倍率評価額)に規模格差補正率を乗じるのは誤りですので注意してください。
「広大地評価」の改正が与える影響
従来の広大地補正率と、改正後の規模格差補正率とを単純に比較すると、(控除される)率自体はずいぶん小さくなったため、その意味では評価が大幅に高くなったといえます。
また、従来の広大地評価の適用のあった土地のうち、中小工場地区に所在する土地や500㎡を下回るミニ開発分譲が多い地域の土地は、改正後は規模格差補正の適用はなくなりますから、評価額が大幅に上がるといえます。
一方、従来の広大地補正は、奥行補正や不整形地補正などの各種補正と重複適用ができなかったのに対し、規模格差補正はそれらの補正と重複して適用できるため、形状などの条件が大きく劣る土地については、重複適用した計算の結果により評価が下がる場合もあります。
さらに、旧広大地には該当しなかったが、新たに規模格差補正の適用ができるケースもあると考えられ、この場合には評価が従前より2割以上下がることになります。たとえば、マンション適地や現況マンションの敷地、開発道路が不要な形状の土地、幹線道路沿いの店舗等の敷地などが考えられます。
従来の広大地の適用要件の判定においては、「その地域」「標準的な宅地の地積」「開発道路の必要性」「マンション適地」などのグレーゾーンが非常に大きく、広大地評価を適用できるかどうかの判断に苦慮するケースが多かったのですが、地積規模の大きな宅地の評価の適用要件は非常に明確なものになりました。
また、地積規模の大きな宅地の評価の適用要件から、開発行為に係る要件が外れたこともあって、規模格差補正が適用される範囲は大幅に増えることが期待されます。(市街化区域内の土地はもちろんですが、非線引きの都市計画区域や都市計画区域外の地域の(1,000㎡以上の)宅地についても、地積規模の大きな宅地の評価の適用が受けられないかをよく確認し、適用もれが生じないよう注意すべきであると考えます。)
(参考)今回の広大地評価の改正に合わせて、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区の奥行価格補正率が一部引き下げとなっています。(1~3%の引き下げ)
※4回にわたって掲載しました「地積規模の大きな宅地の評価」に関する解説は今回で終了です。
(次回に続く)