相続税申告のポイント⑭~地積規模の大きな宅地の評価②

 今回も前回に引き続き「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる宅地の各要件について、細かく解説していきます。

2 地区要件(普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区に所在すること。)

 対象地が、普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区に所在するかどうかは路線価図を見れば簡単に確認できます。 

注意したいのは対象地が複数の路線に接しており、かつ、その地区区分が異なる場合です。その場合には、正面路線の地区区分により判定します。(正面路線の地区区分が、普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区でなければ、地積規模の大きな宅地の評価はできないということになります。) 

ここで正面路線とは、原則として接する各路線の路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額が一番高い路線とされています財産評価基本通達16。単純に一番高い路線ではありませんので注意してください。(正面路線の判定については、当ブログの『相続税申告のポイント⑥~正面路線の判定方法等』を参照)

 次に、実務ではあまり例はないと思われますが、正面路線が2以上の地区にまたがる場合が考えられます。この場合は、接する地区ごとの地積を算出し、地積の多い方の地区区分により判定することになります。

3 除外要件(市街化調整区域に所在する宅地でないこと。)

 (ただし、都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除きます。)

 

次に、対象地が市街化調整区域内かどうか確認します。市街化調整区域の場合には、『都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域』かどうかの確認を行うことになります。 

都市計画法第34条第10号は、地区計画又は集落地区計画の区域内において当該地区計画等に定められた内容に適合する開発行為を認めるものです。 

市街化調整区域内の地区計画は、全国で726箇所指定されています(平成27年3月31日現在、国土交通省の都市計画現況調査より)。 

対象地の市区町村に市街化調整区域内の地区計画があるかどうかは、国土交通省の都市計画現況調査のホームページに、全国の地区計画のリスト(エクセルファイル)がありますので、そこで確認することができます。(そのエクセルファイルの摘要欄に「調-イ」「調-ロ」「調-ハ」と記載されているものが、市街化調整区域内の地区計画です。) 

また、同じホームページに全国の集落地区計画のリストもあります。(同日現在全15箇所、集落地区計画が定められる地域は、市街化区域を除く都市計画区域内で、かつ、農業振興地域内の土地の区域となっています。) 

対象地の市区町村に地区計画又は集落地区計画があった場合には、対象地がその区域内にあるかどうか、区域内であった場合には、その地区計画等が「宅地分譲」のための開発ができるかどうか確認することになります。(地区計画等は市区町村が定めることになっていますので、市区町村の担当部署に確認します。また、市区町村のホームページに掲載されている都市計画の地図情報の中には、地区計画の情報も確認できるものもあります。) 

同法第34条第11号は、条例により指定することによって開発許可が可能な区域とすることができるもので、その区域指定については、都道府県が行っているところと、市区町村が行っているところがあります。 

ですので、担当する都道府県または市区町村の開発担当の部署に指定区域等について確認することになります。(担当部署についてはインターネットで検索することをお勧めします。条例指定区域の場所についても地図等をインターネットに掲載している市区町村もあります。) 

ここで注意したいのは、同法第34条第10号又は第11号の区域内であるかどうかの確認だけではなく、対象地がその区域内だった場合には、その区域が『宅地分譲に係る開発行為』が可能な区域かどうかもあわせて確認する必要がある、ということです。 

市区町村によっては、指定区域内に建築できる建物の種類等について、「自己の居住の用に供する住宅」に限って建築を認めるといったような制限を加えているところもあります。「自己居住住宅」しか認められないということは、(他人のために)開発分譲することはできないということです。 

ですので、その区域が「宅地分譲」のための開発ができるかどうかもあわせて確認するようにしてください。(くれぐれも、対象地が都市計画法第34条第10号又は第11号の区域に該当するという確認だけで、規模格差補正を適用することがないよう注意してください。筆者の印象では、特に同法3411号の指定区域では、何らかの制限を設けているところが多いように感じます。)

 市街化区域と市街化調整区域の線引きがされていない地域があります。非線引きの都市計画区域と、都市計画区域外の地域(準都市計画区域を含む)です。 

線引きがされていない地域ということは市街化調整区域ではないということになりますから、「市街化調整区域に所在しないこと」という要件には当然該当し、それ以外の要件にも該当すれば「地積規模の大きな宅地の評価」の適用があります。 

対象地がこれらの区域だった場合についても、規模格差補正の適用ができないかきちんと確認する必要があります。(筆者の経験では、非線引きの地方都市やリゾート地のマンション敷地等が、規模格差補正の対象となった例があります。)

(参考)三大都市圏を含む都市計画区域については、必ず市街化区域と市街化調整区域の線引きがされています。(都市計画法第7条)

 次回に続く