平成30年以降の相続・贈与について、従来の広大地の評価(広大地補正)は全面的に廃止され、代わって「地積規模の大きな宅地」について「規模格差補正」が新たに導入されました。
規模格差補正の算式等の概要は、当ブログの『やさしい財産評価入門⑮~規模格差補正(広大地評価の改正)』を参照していただくとして、今回から数回にわたって「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる宅地の各要件について、細かく解説していきます。
「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる宅地の要件は次のとおりです。
① 三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地であること。
② 普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区に所在すること。
③ 市街化調整区域に所在する宅地でないこと。(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除きます。)
④ 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地でないこと。
⑤ 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地でないこと。
なお、倍率地域に所在する宅地の場合は、上記①、③、④及び⑤の要件に該当すれば適用対象となります。ただし、大規模工場用地(財産評価基本通達22-2)に該当するものを除きます。
また、市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林及び市街地原野についても、宅地であるとした場合に上記適用要件に該当すれば、適用対象となります。(宅地への転用が見込めないと認められる場合を除きます。経済合理性がないくらいに多額の造成費を要する場合や、急傾斜地などのように宅地造成が物理的に不可能な場合です。)宅地比準方式により評価する雑種地も同様です。なおこれらの場合は、宅地造成費相当額については別途控除して評価することになります。
1 面積要件(三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地であること。)
面積要件を判定するためには、まず対象地が三大都市圏の範囲内にあるかどうかの確認が必要です。三大都市圏内か否かによって、面積要件の下限が500㎡もしくは1,000㎡と、大きく変わるからです。
三大都市圏の範囲は、三大都市圏に該当する都市(市区町村)の一覧表等により確認します。その一覧表は、国税庁ホームページのパンフレット『「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました』、または、『「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシート』に掲載されています。
なお、その一覧表に掲載されている市町村の全域ではなく、一部の地域について三大都市圏に該当する区域の指定がされているところがあります。対象地がその市町村に所在する場合には、個別に三大都市圏の区域内であるかどうか確認する必要があります。(上記一覧表の「一部」の欄に表示されている市町村です。)
その確認は、府県または市町村の、首都圏であれば「首都圏整備法の既成市街地又は近郊整備地帯」、近畿圏では「近畿圏整備法の既成都市区域又は近郊整備区域」、中部圏は「中部圏開発整備法の都市整備区域」を担当する部署の窓口で行います。
ちなみに筆者が事務所を構える埼玉県の例で実際に確認したところ、一部指定区域の市である熊谷市は(平成17年合併前の)旧大里町の全地域が、飯能市は(同年合併前の)旧飯能市の全地域(つまり合併前の旧名栗村の地域を除く地域)が近郊整備地帯の指定区域であり、三大都市圏に該当する地域であることがわかりました。
皆さんも、地元の地域がこの一部指定区域である場合には、このように市町村合併の前の地域で分けられる例もあると思われますので、あらかじめ確認しておくのもよいと考えます。
(筆者が、上記の埼玉県の例を電話取材により確認したのは、平成29年11月のことですが、担当部署がどこであるかを探しだすのに大変苦労しました。なお、一部指定区域の範囲の確認には『愛知不動産鑑定所』のホームページが大変有用です。一部指定区域の多くの市町村の実例を紹介しているとともに、すべての地域を具体的に地図で可視化したものもアップしています。)
ここで、もし対象地の地積が500㎡(または1,000㎡)を少しだけ下回るような場合には、相続人等の関係者に測量図の有無等を確認し、実測面積が500㎡(または1,000㎡)以上でないか確認する必要があるでしょう。また、測量がされていなかった場合でも、規模格差補正の適用の可能性を考えれば、新たに測量をすることも考慮したほうがよいケースもあると思われます。(例えば縄伸びが考えられる地域や土地など。)
(参考) 共有地の場合の面積要件の判定は、持分あん分前の共有地全体の地積によります。マンションの敷地権の場合も同様です。(大きなマンションの敷地は、規模格差補正の適用対象となる可能性が大きいので要チェックです。)
(この記事の内容は、㈱税経より出版されています「税と経営」の平成30年1月1日号に掲載された「地積規模の大きな宅地の評価(広大地評価の改正)徹底解説」の記事の内容を、手直しやアップデートをして載せるものです。)
(次回に続く)