相続税申告のポイント⑧~不整形地の評価方法

  不整形地の評価方法について、財産評価基本通達(20)は4つの方法を示し、そのいずれかの方法により奥行価格補正から側方(二方)路線影響加算まで(同通達(15)(18))の計算を行ったものに、不整形地補正率を乗じた価額で評価するとしています。その4つの方法を要約したものが下の図です。

 ※ 財産評価基本通達(20)(4)では、近似整形地を求めたうえで差引き計算をする方法となっていますが、近似整形地を求めない、単純な差引き計算による方法も可能と考えられます。

財産評価基本通達では、4つの方法のいずれを適用するかについては細かく説明されておらず、複数のケースに該当する場合には、有利な方を選択することができると解されます。(※ 4つのうちいずれの方法を採用したとしても、不整形地補正率自体は(正面路線から見た想定整形地の地積により計算しますから)変わることはありません。)

 

 左図②の想定整形地による方法は、一番基本となる方法であり、どのような不整形地でも適用可能と考えられます。奥行距離の取り方も原則どおり〈地積÷間口距離と、想定整形地の奥行のどちらか短い方〉ですし、手間も一番少ない方法です。

一方、①の整形地に区分する方法は、路線からの垂線により完全に整形地に区分できる場合にしか使えませんから、実務ではそれほど該当するケースは多くないように思います。

 ③の近似整形地による方法は、実際の近似整形地の作図が難しいように思いますが、①及び③の方法とも、②の方法より奥行価格補正率が有利になるケースでないと、その方法を使うメリットはありません。(㊟ ①の方法はそれぞれ区分した個々の整形地について、間口狭小補正率及び奥行長大補正率の適用はできません。) 

最後に④の差引き計算による方法は、単価の高い手前部分の評価額を差し引くことによって、単純に②の方法で計算するよりも単価が低く抑えられて有利になるケースがあると考えられます。図のような形状の土地の場合は適用を検討すべきであると考えます。(現実的には④のような整形な土地は少ないでしょうから、③の近似整形地による方法と組み合わせて使う方法(財産評価基本通達(20)(4)の方法)が多いと思います。近似整形地図面を作成するのは結構手間がかかりますが、図④のⒶ+Ⓑの画地の奥行価格補正率が1.00である場合には、差引き計算をすることのメリットはありませんから、それが差引き計算をするかどうかのひとつの指標になると考えられます。) 

最後に、不整形地補正をしない(できない)ケースをご紹介します。 

下図のような、帯状部分を有する土地については、通常のように不整形地補正率による評価計算を行なわず、帯状部分とそれ以外の部分に分けて評価した価額の合計額により評価するものとされています。(国税庁ホームページの質疑応答事例より)

 形式的に、全体を不整形地補正率により評価計算を行うと、Ⓐ部分や㋑部分のみを所有している場合よりも、帯状部分も一緒に所有している方が評価額が低くなってしまうという矛盾が生じてしまい、不合理であるから、というのがその理由です。

 

図(左側)の評価計算 

 100,000× 1.00(奥行価格補正率) × 200㎡ = 20,000,000円 

 100,000× 0.90(奥行価格補正率) × 10㎡ = 900,000円 

評価額(Ⓐ+Ⓑ)20,900,000円 

仮に、ⒶとⒷをあわせて不整形地として評価すると、 

20,900,000円 × 0.82(不整形地補正率) 17,138,000円 

となり、Ⓐのみを所有している場合の評価額2,000万円より評価額が低くなってしまい、矛盾が生じます。

 次回に続く。次回は上に紹介した4つの方法のうち、差引き計算についてさらに詳しく解説します。)