今回は相続財産である土地をいかに漏れなく把握するかという話です。相続人が、被相続人の所有していた土地を完全に把握していれば問題ないのですが、そうでないケースもあるでしょう。
そのような場合にまず考えられるのが、不動産のある市区町村から毎年送られてくる固定資産税納税通知書に添付されている「固定資産税課税明細書」で確認する方法ではないでしょうか。
この場合に注意しなければいけないのは、固定資産税課税明細書には非課税の土地は記載されていないことがあるということです。
固定資産税が非課税の土地でも、通常は、相続税は課税となると考えられます。
例えば、公衆用道路については固定資産税が非課税となっていますが、相続税では『不特定多数の者が通り抜けできる私道』のみ評価額はゼロとなりますが、それ以外の私道は3割評価の有無の違いはあれ、課税対象となります(詳しくは私道の評価の回で解説します)。
したがって、固定資産税課税明細書だけで判断すると、申告もれの土地が生じる恐れがあるということに留意が必要です。
そういう点では、被相続人の「固定資産名寄帳」を取った方がよいかもしれません。
㊟ 市区町村によっては「名寄帳」にも非課税土地が載っていないケースもあるようですので、請求の際、市区町村に確認してみるとよいでしょう。
さらに、「固定資産税課税明細書」も「名寄帳」も共有者がいる場合には、単独名義分と共有分でそれぞれ別様となりますので、請求する際には、「共有分」の有無も併せて確認しましょう。
(課税明細書に非課税土地が記載されるかどうかは、市区町村によって取り扱いが全く異なるようです。ただし、非課税土地を全て記載するという市区町村であっても、その市区町村内に所有する土地が非課税土地のみの場合には、そもそも納税通知書及び課税明細書自体が発行されないようです。そうすると、例えば単独所有の土地のほかに公衆用道路を共同で所有しているが、その共有者らがその市内に共同で所有する土地が非課税土地のみの場合には、その非課税土地の課税明細書は発行されないことになり、結果的に把握もれの土地が生じる恐れがあります。)
土地の名義が被相続人の先代の名義のまま変更されていないということが実際にあります。このような土地は、通常、その相続人あてに固定資産税納税通知書が来ていますから、そのような通知が来ていなかったかどうか確認するとよいでしょう。
「固定資産税課税明細書」も「名寄帳」も、当然その市区町村に所在する土地しか載っていません。他の市区町村に土地を持っていなかったかどうかを確認するにはどうしたらよいでしょうか。
もちろん、相続人に聞くことが第一ですが、そのほかに被相続人の預貯金通帳を確認するのもひとつの方法です。もし固定資産税が口座振替の方法で支払われていた場合には、その通帳の摘要欄に引き落としの記録が残っています。たとえば「○○シコテイシサンゼイ」「○○シコテイトシケイカク」のような印字があれば間違いないでしょう。
もしその市区町村が土地所有を把握していない場所であれば、その市区町村に「名寄帳」を請求すればいいのです。遠隔地でも郵送による請求ができるはずですので、その市区町村に確認してみましょう。
㊟ その市区町村に所有している土地の課税標準額の合計額が、固定資産税の免税点(通常30万円)未満である場合には、固定資産税は課税されませんので、通帳引き落としも(当然)ありません。固定資産税の支払から捜す方法も完璧な方法ではないことに留意してください。
(次回に続く)