平成30年以降の相続・贈与について、従来の広大地の評価(広大地補正)は全面的に廃止され、代わって「地積規模の大きな宅地」について「規模格差補正」が新たに導入されました。
従来の広大地補正率と、改正後の規模格差補正率とを単純に比較すると、土地の面積が500㎡の場合は0.575➡0.8、1,000㎡の場合は0.55➡0.78、3,000㎡だと0.45➡0.74、5,000㎡では0.35➡0.71(※いずれも三大都市圏のケース)となり、その差はおおよそ22~36%と非常に大きく、その意味では評価が大幅に高くなったといえます。
しかし、従来の広大地補正は、奥行補正や不整形地補正などの各種補正と重複適用ができなかったのに対し、規模格差補正はそれらの補正と重複して適用できるため、形状などの条件が大きく劣る土地については、重複適用した計算の結果により評価が下がる場合もあります。
また、旧広大地の適用要件の判定においてはグレーゾーンが大きく、広大地補正が適用できるかどうか不明確なケースが多かったのですが、規模格差補正の適用要件は非常に明確になりました。
さらに、旧広大地には該当しなかったが、新たに規模格差補正の適用ができるケースもあると考えられ、この場合には評価が従前より2割以上下がることになります。
このように、その土地の形状等の個々の状況により、旧広大地の評価より、評価額が上がるか下がるかは変わってきます。
規模格差補正の適用要件(概要)
① 三大都市圏は500㎡、それ以外は1,000㎡以上の地積であること
② 普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区に所在すること
③ 調整区域の場合は、宅地開発可能な区域であること
④ 工業専用地域でないこと
⑤
容積率が400%(東京23区内は300%)以上でないこと
旧広大地の要件(参考)
Ⓐ 大規模工場用地でないこと
Ⓑ マンション適地でないこと、既にマンション等の敷地として開発済でないこと
Ⓒ その地域の標準的な宅地に比して著しく面積が広大であること
Ⓓ 開発道路が必要と認められること
Ⓔ 現に有効利用されている建築物の敷地でないこと
(幹線道路沿いの大規模店舗等)
上記①~⑤の要件に該当さえすれば、旧広大地には該当しなかった、マンション適地や現況マンションの敷地、開発道路が不要な形状の土地、幹線道路沿いの店舗等の敷地であっても、規模格差補正の適用は受けられることになると考えられます。
「地積規模の大きな宅地」については、次の算式により評価します。
また、上記算式中の「規模格差補正率」については、次の算式によって計算します。
上記補正率の算式中の「Ⓑ」及び「Ⓒ」の係数は、次の表のとおりです。
※ 規模格差補正の適用要件は旧広大地のそれに比べ明確になったことは事実ですが、正確な判定にはある程度専門的な知識が必要になります。
※筆者の作成した「Excel土地評価明細書」には、三大都市圏か否かをチェックすれば、規模格差補正(率)を自動計算する機能があります。(ただし、規模格差補正の各要件に該当するかどうかの自動判定機能はありませんので、ご自身で要件に該当するかどうかは判断していただくことになります。)
(次回に続く)
この記事のカット等は国税庁のホームページから引用しました。(国税庁ホームページの画面を加工、トリミングしています。)