これまでこのブログでは、図面上の間口・奥行距離を示して評価の計算例を説明してきましたが、では実際に土地の評価をする場合に、間口や奥行の距離はどのように測定すればいいのでしょうか。
メジャーで距離を測ろうとしても、建物等が邪魔をして測れないこともあるでしょうし、隣地との境界点がはっきりしないことも多く、現地で計測するのは思った以上に困難です。仮に測れたとしても、不整形地補正率を求めるための想定整形地図面を作成するには、評価する土地の図面が必要です。そこで今回は、図面により間口・奥行距離を測定する実際の方法を説明します。
評価のための図面として考えられるのが、「公図」「地積測量図」(いずれも法務局備え付け)、もしくは「(現況)測量図」です。
「地積測量図」は、土地の登記簿に付随して法務局に備えられる図面で、その土地の形状、地積(面積)と求積方法などが記されたものです。境界立会いのうえ測量・作成された図面であり、正確性は高いです。
「公図」は、地図(法14条地図、ごく少数しか整備されていません)が備え付けられるまでの間、地図に準ずる図面として地図に代わって法務局に備え付けられている図面で、土地の大まかな位置や形状を表すものです。公図の多くは作成時期が古く、形状等が現況と大きく異なる場合があります。
「(現況)測量図」は境界立会いをせず測量・作成された図面です。
評価のために使う図面としては、やはり正確性が高いものが望まれますから、可能な限り「地積測量図」を用意します。しかし、実際には地積測量図のない土地も数多く存在します。
地積測量図がない場合には「(現況)測量図」がご自宅にないか確認します。
(現況)測量図もない場合には、「公図」を使用しますが、公図は形状等が現況と大きく異なる場合がありますので注意が必要です。(筆者は「公図」による(図面上の)距離の測定は(正確性に欠けるため)極力避けています。)
このほかに法務局に備え付けられている図面で「建物図面」があります。これは建物の平面図とともに、土地の形状図の上に建物の位置している場所を示す図面が記載されています。たとえば一筆の土地の上に複数の貸家があって、貸家の敷地ごとに評価単位を分けて評価をするような場合に「建物図面」が有用な場合があります。
「地積測量図」「公図」「建物図面」を入手するには、① 法務局の窓口で請求する方法(電子データ化されている図面は、お近くの法務局で全国どこのものでも取ることができます。)、② 郵送で請求し、郵送で受け取る方法、③ オンライン(インターネット)で請求し、郵送または法務局の窓口で受け取る方法、 ④ 登記情報提供サービスにてデータを取得する方法(あらかじめ登録が必要)、があります。
ここで注意したいのが、法務局等に請求する際には土地の所在(○市○町○丁目)と「地番」が必要になるということです(建物図面は家屋番号も必要です)。
地番はいわゆる住居表示(○○町○丁目○番○号)とは異なります。
地番や家屋番号をてっとり早く確認する方法は、毎年5月頃、市町村役場(または都税事務所等)から送られてくる、固定資産税納税通知書に添付されている「固定資産税課税明細書」により確認する方法です。
「固定資産税課税明細書」には、その市区町村内で所有している土地・家屋の一覧、地番、家屋番号や、倍率地域の土地の評価や家屋の評価の際必要になる「固定資産税評価額」が記載されており、大変有用です。
図面が用意できたら、図面上での距離の求め方です。
「地積測量図」「(現況)測量図」「公図」とも通常、縮尺(〇百分の1)が明記されていますので、図面上の求めたい距離を定規で計測し、例えば五百分の1の図面なら、図った距離を五百倍すればいいのです。
五百分の1の図面上で15.5㎝だったら、15.5×500=7,750㎝=77.5mということになります。
ただし、縮尺から逆算して距離を求める方法は、誤差が生じやすいのも事実です。たとえば五百分の1の図面で1㎜の誤差は500㎜=0.5mの誤差になってしまうのです。また、図面が縮小コピーされていると縮尺が合っていないことになり、正しい距離は計測できません。
その点、地積測量図や(現況)測量図は、通常、図面上にたくさん距離が表示してあります。求めたい間口や奥行の距離がズバリ表示されていなくても、定規で測って対比計算をすることにより、距離は簡単に求められます。
(筆者は、図面上の距離の測定の際は(正確性に欠けるため)縮尺から逆算する方法は極力避け、基本的に対比計算によって求めています。)
対比計算の例
(図でXの図面上の計測距離が49.00㎜、13.07の辺が55.60㎜だったら)
X:49.00 = 13.07:55.60
55.60X= 49.00×13.07 =640.43
X= 640.43÷55.60 = 11.51m(間口距離)
(次回に続く)